初心者ガイド > 第2回

2. 株主優待とは
〜企業から届く「感謝の贈り物」の仕組み〜

第1回の記事では、企業に資金を提供した見返りとして「配当」や「株主優待」がもらえる仕組みを解説しました。第2回では、いよいよ当サイトのメインテーマである「株主優待制度」の裏側に迫ります。会社はなぜ、現金のほかにわざわざ自社製品やクオカードなどを配るのでしょうか?そのカラクリを解き明かします。

1. 世界でも珍しい「日本独自の文化」

欧米などの海外市場において、企業が株主へ利益を還元する方法は「配当金(現金)」か「自社株買い(株価を上げる施策)」が基本です。商品を直接郵送して還元するという「株主優待」の制度は、実は世界でも類を見ない日本特有の文化(お中元やお歳暮の文化の延長)と言われています。

近年、日本の上場企業の約3割〜4割が何らかの株主優待制度を導入しており、日用品や食料品が定期的に自宅へ届くその魅力から、日本国内における個人投資家の支持を集めています。

2. なぜ会社は自社製品や金券を配るのか?

会社側にも、ただ優待品をプレゼントするだけではなく、経営上のメリット(戦略)が存在します。主に以下の2つの理由があります。

個人投資家(長期的なファン)を増やし、株価を安定させるため

海外の機関投資家(巨大な資金を持つプロ)は、会社の業績が少しでも悪くなると容赦なく株を大量に売り払い、株価を暴落させることがあります。一方、「優待目的」で株を保有している個人投資家は、優待が続く限り多少の株価の上下では株を売らずに長く持ち続けてくれる「安定株主」になってくれやすい傾向があります。会社としては、株価の乱高下や敵対的な買収を防ぐために、自社のファンとなってくれる個人投資家を一人でも多く増やしたいのです。

自社製品の提供は「ウィンウィンの関係」になるため

例えば、ある会社が「3,000円分の自社の食品詰め合わせ」を優待として配るとします。受け取る株主から見れば間違いなく「3,000円相当の価値」があります。しかし、会社側から見れば、自社製品なので原価は製造コスト(例えば1,000円)だけで済みます。つまり、現金を3,000円配るよりもはるかに少ない負担で、株主に3,000円分の満足度を与えられるという費用対効果を生み出せるのです。

【図解】自社製品優待のウィンウィンの関係

会社側
(負担は原価1,000円)
自社製品の発送
株主側
(価値は小売価格3,000円)

3. もらえる優待の主な種類

当サイトのデータベースにも登録されている、代表的な優待品のジャンルをご紹介します。

🍜

自社製品の詰め合わせ

食品メーカーや飲料メーカーに多い王道の優待。段ボールいっぱいの自社商品が届き、これを開封するのは優待の醍醐味の一つです。

🍽️

食事券・お買い物券

外食チェーンや小売店が発行する割引券や金券。普段からよく行くお店の優待であれば、現金と同じように価値を持ちます。

💳

QUOカード等の汎用金券

コンビニや書店で使えるQUOカードなど。利便性が高く人気ですが、会社にとって「負担が重い」ため廃止されやすいリスクも併せ持ちます。

🎁

カタログギフト

地域の特産品やグルメなどを自由に選べるカタログ。自社製品を持たない企業(IT系や金融系など)が導入ケースとして多いです。

4. 配当金との違い(税金の強み)

株価のリターンとして配当金と株主優待は「両輪」であると説明しましたが、受け取る側に大きな違いがあります。それは「税金」です。

通常、株式の「配当金」を受け取る際には、自動的に約20%の税金(所得税や住民税)が差し引かれます。つまり、10,000円の配当が出ても、実際に手元に入るのは約8,000円になってしまいます。

対して、株主優待の品物や食事券は、現金配当のように「あらかじめ約20%の税金が自動的に天引き(源泉徴収)される」ことがありません。そのため、ひとまず額面そのままの価値を手元に受け取ることができるという特徴があります。

※税法上の厳密な扱いでは、株主優待は「雑所得」に分類されますが、一般的な会社員の場合であれば年間の給与以外の該当所得が20万円を超えなければ原則として確定申告は不要となるケースがほとんどです。

💡 第2回のまとめ

  • 株主優待は、企業が株主へ送る日本独自の特別な還元文化
  • 企業側は、長期的なファン(安定株主)を獲得し、自社への愛着を深めてもらう目的で行う。
  • 自社製品の提供は、企業にとっては原価のみの負担で済み、株主は小売価格の価値を享受できるウィンウィンの関係
  • 食事券・QUOカード・カタログギフトなど、内容の幅は多岐にわたる。
  • 配当金と異なり、約20%の税金が天引きされず、そのままの価値で受け取れるという実利的な強みがある。
⬅ 1. 株式とは何か?次へ:3. 株主優待の選定方法 ➔